AID

 AIDという不妊治療をご存じの方はいらっしゃいますか?
その中で正確に内容を把握し、
しかも治療を希望される方はどれほどいるでしょう?

 AIDとは非配偶者間人工授精のことで、
旦那さん以外の精子を奥さんに人工授精することです。
大阪では現在3カ所が施設認定を受けていますが、
うち2カ所は大阪市内にあります。

 数年前まではもう1カ所ありましたが、
現在は院長先生の引退に伴い閉院されています。

 このAIDでは、
医学生などの遺伝的に問題がなさそうな精子をボランティアで提供してもらい、
精子提供者の素性は明かさないという条件で行います。
そのため遺伝上の父親は一生分からないことになり、
ある日子どもがAIDのことを知っても、
自分の遺伝上の父親は分かりません。

 最近医師の男性が、
自分の遺伝上の父親を捜しているという記事がありました。
彼は医学部の学生の時にたまたま血液型上、
自分の血液型が両親からは産まれないことを知り、
初めて両親から説明を受けたそうです。

 当然ながら子どもが成人している頃には、
カルテの保存義務期間である5年を大きく越えていますので、
病院にはカルテは存在しません。
つまり探しようがないということになります。
勿論提供元が分かっていれば、
学生名簿からも探すことは出来ますが、
数百人から直接お話を聞く必要があります。

 そもそも提供者が揉め事に自ら首を突っ込むとは思えず、
自覚はあっても名乗り出ることはないでしょう。

 またAIDでは、
条件が揃えば性同一性障害の方でも子どもを授かることが可能です。
この場合にも子ども側の立場でのメンタルケア等が必要でしょうし、
そうした場合の専門機関や窓口が必要ではと思います。

 どうしても生殖医療の場合、
倫理的な問題よりも技術の方が先行していきますし、
親と子の意識の差も生じます。
これは生殖医療の先進国であるアメリカでも同様で、
子ども側のメンタルケアが十分とはいかないようです。

 人生経験豊富で、
様々な経験を重ねた親でも悩む方法ですから、
事実を知った子どもの悩みは計り知れません。
とかく無視されがちな「生まれくる子ども」のこと、
じっくり考える必要があります。